乳がん,肺がんの遺伝子変異を特定する方法が世界初

がん進行の要因となる遺伝子変異を特定する方法が世界で初めて発見された。

研究は初期段階なものだが、がん細胞が特定の遺伝子が結びついた時に変異の加速が起こり、 がん症状が悪化することが確認されたのだ。

がんの進行を早める変異をもたらす「がんの協力遺伝子」が特定されただけでなく、さらには、乳がん肺がんを起こす変異に関して、サイトカインシグナル抑制因子(SOCS)を新たに発見した。これまでSOCSをがんと関連付けた研究報告はなく、画期的な成果と位置づけられている。

これらの遺伝子変異を利用すれば、 がんへの変異を特定するためのコスト低減が可能となり、関連した抗がん剤新薬の開発も期待されている。

発見したのはシンガポール科学技術研究庁傘下の分子細胞生物学研究所で、研究論文が米国の「ジーンズ・アンド・ディベロップメント」に掲載される。

抗がん剤新薬は既存薬にペプチドを付加

効果が薄くなったり、効かなくなった抗がん剤や抗生物質などの再活性化が可能となる発見がなされた。

土中の微生物が生成する抗生物質「ストレプトスリシン」のメカニズムを解明したことで、この仕組みを応用し、抗生物質の効能を保持しつつ人体などへの毒性を緩和するアミノ酸化合物(ペプチド)の合成に成功したのだ。

現在、約2万種類の抗生物質や抗がん剤、免疫抑制剤が生産されているが、実用化されているものはわずか1%。残りの99%は毒性が強いなどの理由で、実用化されていない。

合成に成功したペプチドは、「病原菌に付着し易く、細胞膜を透過し易い」という特徴がある。この性質を利用して、効かなくなった抗がん剤に酵素を用いてペプチドを付加することで、再活性化を図ることも可能となるのだ。

さらに、今回発見されたペプチドを既存の抗生物質に付加することで、 新薬の発見につながり、抗がん剤の新薬開発にも貢献する見込み。

解明したのは、福井県立大の研究チーム。研究論文は、科学誌「Nature Chemical Biology」に掲載された。