膵臓がん手術では、がん患部の膵臓だけでなく、転移の可能性のある周辺の臓器である胆のう、十二指腸も同時に切除する。この手術は患者に多大な負担のかかる大手術であることがこれまでの常識であった。
患者の負担が大きいことの意味は、がんを切除しても手術後の体力低下時期に免疫力も低下することで転移・再発を許してしまうリスクが懸念されるものだっ た。さらには、すい臓がん手術からの体力回復が遅れることに関してして、早々に実施すべき抗がん剤治療の開始時期が遅れてしまうことも軽視できないマイナ ス要因だったのである。がん患部切除から抗がん剤治療までの時間間隔が開いてしまうと、抗がん剤治療の効果が薄れ、がん再発の可能性が高まってしまうの だ。
これまでの膵臓がん手術は、出血の危険性から開腹手術で実施することが一般的だったが、近年では切除と同時に止血できる手術機器の開発が寄与したことで 出血のリスクが最小化されたため、その応じてすい臓がん手術をも開腹手術ではなく、腹腔鏡手術で実施することがが可能になった。
膵臓がんを腹腔鏡手術することのメリットは、患者の手術の負担が比較的軽いことから、がん切除後の体力回復が早まり、総じて抗がん剤治療を早期に開始で きることだ。このように短期間に続けてガン切除手術と抗がん剤治療を連続させることで、膵臓がん治療の成果は格段に上がる。
実際に従来の回復する膵臓がん手術から体力が回復して抗がん剤治療へ移項できる期間の平均は約6週間を要したが、腹腔鏡手術で膵臓がんを切除すると術後約3週間前後で抗がん剤治療へと移項できる。術後の回復期間が従来の半分のになっているのだ。
開腹期間の短縮は、それだけ膵臓がんの腹腔鏡手術が患者の負担が少ないことを意味している、痛みや苦しみを加味すると負担は半分以下と考えるのが妥当だろう。
膵臓がん手術の術式をがん患者は選べないことの方が多いだろう。しかし、病院は選べる。特に、腹腔鏡手術は手術機器の操作の鍛錬が不可欠なため、熟練の 執刀医の存在を確認して病院を選びたい。いや、選ばねばならない。膵臓がん手術はその後年々にも渡る膵臓がん治療の単なる1通過点に過ぎない。このよ うな事象で体力を削がれる事はその後の抗がん剤治療に対抗するために温存すべき体力を損なう危険があるからだ。
「膵臓がんは腹腔鏡手術」は、標準治療=常識化する可能性のある術式だと言えるだろう。