抗がん剤耐性の解明から新薬開発

がん患者に抗がん剤が効かなくなる仕組みが解明された。

抗がん剤が効かなくなる仕組みに関与するたんぱく質を特定することに成功したのだ。

特定された抗がん剤耐性のたんぱく質は、「TIM-3」。「TIM-3」は、がん細胞の周辺にある樹状細胞がつくる呼ぶたんぱく質。 TIM-3によって抗がん剤の活性を補完する自然免疫が抑制されてしまい、結果として、がん組織が抗がん剤への耐性を獲得してしまうことが解明されたのだ。

通常はがんを抑制する役割を持つ樹状細胞が、 がん細胞が近くにある場合には、がんの治療を邪魔してしまう可能性もあることが示されたと言える。

抗がん剤を使用しているうちにがん細胞の増殖を抑える効果が薄れてしまう現象を「抗がん剤耐性」と呼ぶが、抗がん剤耐性はがん治療の妨げとなる。しかし、特定されたたんぱく質TIM-3の働きを阻害できれば、 抗がん剤による治療効果が改善される。既に、マウスの実験によって、TIM-3の働きを阻害で、抗がん剤による治療効果が改善できることが確認されており、新しいがん治療=抗がん剤新薬の開発へ大きな足掛かりが得られた。

研究は、北海道大学遺伝子病制御研究所のグループが実施し、成果が米科学誌ネイチャー・イミュノロジーに掲載された。

治験最終段階の肺がん治療の抗がん剤新薬

肺がん治療の抗癌剤新薬の治験が新たに開始された。

治験が開始されるのは、武田薬品工業と米子会社ミレニアム・ファーマシューティカルズが開発中の抗がん剤「AMG706(一般名:モテサニブ)」。治験の対象とするがんは、「進行非扁平上皮非小細胞肺がん」で、最終段階である第3相(P3)試験をアジア共同臨床として、今月7月から開始した。

新薬治験の実施主体は、武田薬品の国内子会社である武田バイオ開発センターで、日本だけでなく、香港、韓国、台湾の4つの国と地域のがん患者を対象として実施されている。

新薬の承認申請の時期などは、まだ「検討中」とされているが、 肺がん患者には治験の好結果と早期の販売開始が待たれる。