胃がん, 前立腺がん が転移する理由

胃がんや前立腺のがん細胞の転移に関与する特定のたんぱく質が発見された。抗がん剤新薬の開発に繋がる可能性を秘めている。

発見された物質は「デイプル」と呼ばれるたんぱく質の一種。デイプルを培養した細胞実験は、胃や前立腺がんの転移を促す信号として知られる別のたんぱく質「ウィント」との相関関係が調べられた。その結果、デイプルを培養した細胞では、ウィントがデイプルを活性化してがん細胞が活性化されたが、デイプルの働きを抑えた細胞では、 がん細胞の活性化は見られなかった。つまり、「デイプル」の働きを抑制することで、「ウィント」の働きを抑制でき、それががん細胞の転移・増殖を抑制できるのだ。

さらに、マウスに傷を付けた実験では、皮膚の表面や真皮の中にあるデイプルが傷口の治癒に効果があることも判明した。今後は「デイプル」が人体にどう作用するかを調べ、 がんの予後の回復や転移の仕組みを解明し、胃がんや前立腺がんの抗がん剤新薬の開発が期待される。

研究は、名古屋大が英科学誌「ネイチャー・コミュニケーションズ」に発表した。

世界初のがん遺伝子抑制の肺がん新薬

原因となる がん遺伝子の働きを阻む作用を持つ世界初のがん治療薬、肺がん治療薬「ザーコリ」(一般名クリゾチニブ)は、ファイザーから発売された。

ザーコリ(クリゾチブ)は、がんを増殖させる未分化リンパ腫キナーゼ(ALK)融合遺伝子の働きを阻害することで、肺がんの進行を抑制できる。肺がん患者の多くを占める「非小細胞肺がん」の患者のうち、約3~5%はこの ALK遺伝子を持つという。

ザーコリの発売により、治療効果が見込まれる患者を予め遺伝子検査によって選んでから抗がん剤を投与する「個別化医療」が開始される。