前立腺がんの最新治療機器とは

前立腺がんの最新治療法

前立腺がんの問題と最新治療機器

日本国内では20年間で3倍もの患者数増となったのが前立腺がん。

男性だけにある臓器である前立腺ががんに侵されるのが前立腺がん。 前立腺がんは死亡の危険性が低いがんであるが、 男性では肺がんに次いでがん患者数が多い。 原因は食の欧米化が主因とされている。

前立腺がんの治療では、 「勃起神経の温存=男性機能」と「括約筋の温存=排尿機能」が大きな課題で、 治療によって約50%がその機能を失うことが大きな問題となっていた。

前立腺がん治療での手術では、「前立腺と精嚢腺」を全部摘出することが多く、 片側だけの神経を取り、片側の神経を残すことで男性機能を温存しつつ、 排尿機能も残すことで尿失禁を避けることが前立腺がん手術の成否となる。

ここで問題なのは、前立腺が狭い骨盤の奥に位置するため精密な手術が困難なの だ。 男性機能や排尿機能を温存するためには、 前立腺がんの患部に張付いている重要な神経を傷付けないように 前立腺を摘出しなければならず、 非常な精密さが不可欠な難易度の高い手術なのだ。 これは「神の手」のような一部の技巧の高い医師以外には、困難な手技であった。 そのため、前立腺がんの手術リスクには、 男性機能と排尿機能の温存は「困難」「望み薄」と覚悟する必要があった。

しかし、最新・最先端の前立腺がんの治療法として、 「勃起機能と排尿機能の温存」という2大課題を克服できる 最新機器による新治療法が2種類も普及し始めている。

手術支援ロボット(商品名:ダヴィンチ)による精密手術

手術支援ロボットの特徴は、精密な手術を医師の技量以上に簡単化できることだ。

医師は、手術台の側でモニターを見ながらロボットアームを遠隔して手術するの だが、機器による各種サポートによって容易に精度の高い手術が実施できるのだ。

患者の体内へ差し込まれるロボットアームは約8mmの太さで、 先端には鉗子やメスが装着され、360度回転操作できる。 腹腔鏡(カメラ)も挿入することで撮影された患部の画像は拡大されてモニターで 観察される。 執刀医が見る手術支援ロボットのモニター画像は10倍に拡大されており、 さらに遠近感が把握できる3D立体画像なっているため、 細やかな がん患部の観察が肉眼よりも容易になっている。

また、ロボットアームは遠隔操作されることで、 執刀医師の手指の動きが1/2~1/5に縮小され、 さらに手指の震えはノイズとして除去される「手振れ補正機能」も備えている。

これらの複合的な機能によって高精度な手術が比較的容易に実施することが可能 になった。

従来の手術では50%程度だった男性機能の温存率が、 手術ロボットによって70%にまで向上された。

2012年4月からは日本でも保険適用されている。

男性機能が保持され、失禁の可能性も減らせるロボット手術は、 前立腺がん手術の主流になることは間違い無い。 日本国内には2011年末で40台程度しかないが、今後は大量の普及が見込まれる。

手術できない末期前立腺がんの最新放射線治療

放射線治療の一種であるIMRT(強度変調放射線治療)。 この治療法は、既に2007年から保険適用されている。

神経内科や糖尿病などの持病との合併症が原因で、 外科手術が困難な前立腺がん患者の治療に供されている。 IMRT(強度変調放射線治療)では、まず超音波で前立腺がん患部の位置を正確に測 定し、 ミリ単位でがん患部と照射機器の位置関係を設定する。

前立腺がんに従来の放射線治療を実施すると、 男性機能の低下や直腸機能の低下という副作用を引き起こすリスクがあった。 しかし副作用のリスクを回避するとがんへの放射線照射量が足りずに治療効果が 得られないというジレンマがあったのだ。

IMRTでは、前もって前立腺がん患部の位置と形を詳細に測定把握し、 がんの位置と形状に合わせて、 多方向から放射線を照射するように改良されている。 照射する方向によってがん患部の形状は異なるために、 機器側の放射線照射口には 「マルチリーフコリメータ」と呼ばれる120枚の可動する「鉛板」が装備されて おり、 照射の都度に前立腺がんの形に合わせて必要な照射口形状に変形されることが 特徴的なのだ。

IMRTによる放射線治療では、 従来の放射線治療よりもがん周辺の臓器への影響が格段に少なくなった。 これによって必要ながん患部にだけ、強い放射線を当てることが可能になり、 治療効果は向上しつつも、周辺への副作用のリスクが低減されたのだ。

患者の負担は減らしながらも治療効果を上げ、 副作用は減らしつつ生活の質も落とさない 理想的ながん治療へ一歩近づいた。

前立腺がんは生命の危険が少ないからこそ、 治療後の生活を見据えた、確かな治療方法の選択が重要なのだ。