最新の肝臓がん治療法2種

切らずに治す最新肝臓がん治療法とは

肝臓がんは、自覚症状が少ないために気付かない間に進行するだけでなく、一度治療しても再発が多い恐ろしい「がん」だ。肝臓がんの死亡者は年間約33,000人で、過去40年間で約4倍に増えた。

肝臓がんの原因は、B型肝炎、C型肝炎のウィルス感染に加え、アルコールが主な原因とされてきた。近年は、栄養過多の肥満による脂肪肝も大きな肝臓がん要因として警告され始めた。脂肪肝が悪化して肝硬変となり、肝硬変がさらに悪化して肝臓がんへと至る。このような肝臓がんの最大の問題は、がん患部を切除しても残った肝臓が、がん再発の温床となってしまうことだ。

このように再発を繰り返す肝臓がんの最新の治療法は切らずに治す治療法だ。切らない手術は、患者の負担が小さく患者の体力を温存できるため、何度でも手術することが可能な点が有利だ。

ラジオ波治療とサイバーナイフが肝臓がん治療の最先端の切らない治療法だ。

<ラジオ波焼灼術>

ラジオ波治療とは、お腹から肝臓がん患部へ細い針を刺し、針先を高温にして周囲のがんを焼き殺す治療法だ。正式にはラジオ波焼灼(しょうしゃく)術と呼ばれ、略称はRFA(Radio Freequency Ablation)とされる。

ラジオ波治療の手術は、コードが付いた特殊な細い針(鉛筆の芯程度)をお腹に指すだけなので患者の負担は非常に軽い。両足の太腿にパット状の電極を貼付け、電流を流すことで針の先端が高温になり、がん細胞が壊死する仕組みだ。

電流を流すと6分程で針の先端の温度が約100度になり、周囲のがん細胞も温度が上昇する。がん細胞は40度以上になると壊死するのだ。1箇所あたり6分程度の治療は、超音波で肝臓がんの位置確かめながら針を刺す場所を変え、少しづつ治療を繰り返す。直径6cm程度のがんに対して約2時間の手術時間。手術後の患者の体に残るのは針を挿した小さな穴だけなので、通常の手術に耐えられない高齢者でも治療が可能なのだ。

また、残った肝臓は影響を受けないため、何度でも繰り返し治療することができる。抗がん剤と組み合わせることも可能なので、より高い効果の肝臓がん治療が施せるのだ。

<サイバーナイフ>

サイバーナイフとは、呼吸による動きもトレースする高精度で特殊な放射線治療機器。

ロボットアームの先端に放射線の照射装置が付いていて、6個の関節を動かして1200方向からがんの形状に合わせて、誤差0.2ミリという精度でがん細胞をピンポイントの照準で放射線照射する。肝臓は呼吸によって1cm程度も動くのだが、ミサイルの追跡システムを応用したシステムで肝臓の動きも自動追尾する。そのため、がん周辺の正常組織へのダメージは最小限なのだ。

正常細胞のダメージが小さいため、従来なら1回しかできなかった放射線治療を何度か繰り返し実施できるようになった。その分、叩けるがん細胞は増え、治療効果は上がるのだ。

サイバーナイフ治療の1ヶ月半後には、がんは半分に縮小した治療報告もある。

サイバーナイフは2008年から保険治療として承認され、肝臓がん治療の有望な選択肢となっている。また、肺がんへの治療でも成果が上がっていることで、ますます注目を集めている最新がん治療法なのだ。