乳がん,肺がんの再発防止に有効な既存薬

がん再発の原因とされる「がん幹細胞」を「再発しないがん細胞」に変える効能が、既存薬である糖尿病治療薬メトホルミンにあることが発見・実証された。

がんを外科手術で取り除いても、少しでもがん幹細胞が残されているとがんが再発してしまう。しかし、この「がん幹細胞」は放射線治療にも抗がん剤治療にも効果が薄く、 がんの根治が困難な原因となってきた。

しかし、がん幹細胞の維持に糖代謝が関係していることが発見され、「がん幹細胞」を「再発しないがん細胞」へと変化させる新薬の開発を目指して研究された。そして、既存の糖尿病治療薬である「メトホルミン」の投与によって代謝調節遺伝子を活性化させる効果で、 がん幹細胞が「再発しないがん細胞」に変化する仕組みを解明した。マウス実験を重ねることで、新治療法の効果と作用メカニズムまでもが確認されたのだ。

糖尿病治療薬「メトホルミン」は、 がんの増殖を抑制する効果が指摘されてきたが、これまでは経験的な知見に留まっていた。しかし、メトホルミンがガン再発を抑制するメカニズムが解明されて、がん幹細胞への効果が確認されたことで、 乳がん肺がんの治療にも応用できる可能性が高まっている。

糖尿病治療薬として既に承認薬となっているメトホルミンのがん治療への応用は、がんへの効能追加申請と承認を経て早期に開始される可能性が高いだろう。

この新しい抗がん治療は、山形大と国立がん研究センターの共同研究チームが世界で初めて実証した。研究論文は米国の科学誌ステム・セルズ・トランスレーショナル・メディシンに掲載されている。

小児がんへ効能・効果の新薬を承認申請

子供のがんである「小児悪性固形腫瘍」は日本で年間に約1,000~1,500人が発症する。

小児がん治療用の抗がん剤が新たに追加される見通しだ。

この小児がん「小児悪性固形腫瘍」に対して、ヤクルトが抗悪性腫瘍剤「カンプト」の効能・効果追加の公知申請を厚生労働省に行った。

「カンプト」は小児がん「小児悪性固形腫瘍」に対しては新薬となるが、「非小細胞肺がん, 小細胞肺がん, 卵巣がん, 子宮頸がん」の治療に対する効能・効果では1994年1月に承認済みで、さらに「胃がん, 結腸/直腸がん, 乳がん, 有棘細胞がん, 悪性リンパ腫」の治療に対しても 1995年9月に効能・効果の追加承認を受けている。

小児がんに対する新薬の承認申請は、厚生労働省の「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」を経て開発要請が出されたもので、早期に承認され、小児がん治療に利用できる要望が高い新薬なのだ。